指標が示す、おカネの課題

皆さん、こんにちは。電機業界で総務的な仕事をしている、よっしといいます。中小企業診断士でMBAという肩書です。前回は、中小企業診断士とMBAの違いについて書かせて頂きました。今回のテーマは指標とおカネの話です。今回はBMIという指標を取り上げさせて頂きます。

目次

BMIとは何か?

皆さん、BMIってご存じですか?

うーん、そろそろ中年に差し掛かってきて、たしか男性は25を超えたら・・・というもののことではありません。

今回お話ししたいのは、Big Mac Indexです。これは1986年からイギリスの雑誌Economistが発表している、世界の購買力平価(為替レートが自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという考え)を示す指標。その基準はなんと、世界的ハンバーガーチェーン、マクドナルドの人気商品ビッグマック ! アメリカでのビッグマック価格を基準として、それぞれの国ではどの程度の金額でビッグマックが買えるかを示すものとなります 。

一般にビッグマックは、ほぼ全世界で同一品質のものが販売され、原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金など、様々な要因を元単価が決定されています。従って、世界各国の総合的な購買力を比較する上での一つの参考基準となり、ビッグマックが安く買える国の通貨ほど過小評価されているという考え方です。誰にでもイメージしやすいハンバーガーを利用するあたり、いろいろな方がお金をわかりやすく伝えるための努力を重ねている姿がうかがえます。

2020年1月に発表された最新の順位(抜粋)は下記の通りです。

出典:エコノミスト

日本は、現在26位(前年度から変動なし)。アジア圏では4番目に位置しています(為替の想定は110.04円/$)。

つまり、ビッグマックは日本で買うより韓国やタイで買う方が高いということになります。

そのためでしょうか。例えば、タイ人の日本旅行は、2014年の約66万人から2019年には139万人に倍増しています(日本政府観光局(JNTO) 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2020年)調べ)。もちろん日本の様々な要素に惹かれて日本を訪れるのでしょうが、そのうちの一つが「物価が安いから」ということなのかもしれません。

「日本は物価が安い」と喜んでいいのか

では、日本は物価が安いから生活しやすいと喜んでいいのでしょうか。

この問いに対しては、確かに日本で生活をする上ではその通りだといえます。また、インバウンドに期待を寄せる観光事業者も同様の思いを抱いていると思います。

しかし、実は、その真因は諸外国の給与が増える中、日本人の給料はほとんど変わらなかったことです。

2000年と2018年を比較し、日本の給与(赤線)は約4万ドルから変わっていません。2018年の為替を1ドル=110円とすると、約440万円となる計算です。皆さんの感覚とあっているでしょうか。

それに対し、例えば2000年の時に3万ドルを割っていた韓国(黄緑)ほぼ日本と同水準になっています。

世界の給与水準($換算)

(出典:OECDデータより)

このように世界的に給与が上がり、物価が上がる中、日本では給与が上がらないことから物価に転嫁することができないのです。そのことがビックマック指数に反映されています。

物価が安いことの問題点

物価が安いということは、実は2つの問題があります。

1つは、為替が割安であるということです。このことは、日本人が同じお金を出して海外から買えるものが減少し、逆に外国人が日本から物を買うことができる量が増えることを意味します。

例えば、近年、食材のステルス値上げ(価格は据え置き、容量を減らす)が話題になっていますが、その背景にはこの問題があります。

https://www.sankei.com/life/news/191007/lif1910070014-n1.html

もう1つの問題は、グローバルで価格が決定されるものは日本人には買いづらくなってきていることです。

例えば、日本が得意とする自動車産業ですが、その製造拠点は世界にあり、世界全体の製造コストを基に販売価格が決定されます。世界的な給与の増加によって製造原価が増加の一途をたどっており、給与対比で自動車の平均販売価格は、1990年には2.3倍程度でしたが、2018年には1.3倍まで縮小しており、日本人の平均給与に肉薄する水準に近づいています。

 出典:日本人の「給料安すぎ問題」。物価も安いので暮らしやすい、は成り立たない

https://www.gentosha.jp/article/15870/

今後日本や企業はどうすべきか

こうした状況に対し、日本や企業はどうすればいいのでしょうか。

私は、この問題に対する最大の解決策は価値のある製品・サービスを提供することで、付加価値を高めることが大切だと考えます。もう少し直接的に言えば、製品やサービスの価値を上げることで値上げを図り、賃上げにつなげていくことです。

このことをわかりやすく示したモデルが、お金のブロックパズルです。

出典:会社のお金の流れを図式化する「お金のブロックパズル」でできることとは

この図が示す通り、会社は売上から変動費を引いた粗利から、固定費を引いて利益を上げています。利益があがったからといって、借金の返済に回したり、税金を払ったりする必要があるため、簡単に給与を増やすことはできません。

また、人件費(給与)を上げるためには粗利を改善することが必要であることがわかります。そのためには売上を上げるか、変動費や人件費以外の固定費を下げるの二つの手段があります。

一般に、粗利を上げるため、コストを下げるということがまず思い浮かぶでしょう。しかし、変動費削減の矛先が、調達先へ向かえば、自社の利益は増えても、調達先の利益は下がってしまいます。そうすると中長期的には、調達先の経営環境を悪化させ、自社のサプライチェーンに影響を与えるかもしれません。

また、削減の矛先が社内に向かうようであれば、必要なものが買えなくなって業務効率が下がり、かえってコストが上がるかもしれません。また、その矛先が人件費に向かうようであれば、優秀な社員の離職を招くかもしれません。

それよりも、値上げをいとわず、お客様にとってより価値のあるものは何かを真剣に考え、真に必要とすることを提供することによって、企業の付加価値を高めていくことが必要です。

日本政府も単に延命を求める企業ではなく、付加価値を高めるために努力を重ねる企業を応援していくべきだと考えます。

私もそうした企業を応援していきたいと考えています。



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執筆者

五味 義也|中小企業診断士・MBA
Gomi Yoshiya

大手電機メーカーにて、経理業務を軸に海外の経理システム構築プロジェクトなどに従事。取材の学校7期生として、取材4件・執筆記事6件などに携わる。家族構成は妻と子供2人。家庭と仕事の両立に四苦八苦している。



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