みなさま こんにちは、大阪府堺市からみなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。今日は、失恋よりも深刻な「解約」について考えてみたいと思います。
ワクワク感はないけれど大切なこと
マーケティングのお話や新規事業のお話は、“ワクワク感”を持って語られるのですが、解約のお話はあまり語られません。特にECビジネスにおいては、CPA(新規顧客獲得コスト)についてばかり熱く語られ、LTV(顧客生涯価値)は後回しです。
自分たちの考えたサービスが、一度も会ったことのない第三者に評価されて、命の次に大切なお金を支払ってまで手に入れようとしてくれるわけですから、そりゃワクワクもしますよね。
しかし、どちらを大切にすべきかは、すでに多くの調査結果で明らかになっています。顧客獲得コストに関する公式はこんな具合です。
既存顧客維持コスト×5倍=新規客獲得コスト
仮に、先月と同じ売上を新規顧客だけで今月も維持しようとすると、先月の5倍の販促費が必要ということになります。きっと赤字ですよね。
ちょっと仮定が偏りすぎましたか?では次は、もう少し身近な事例で考えてみましょう。
10%は大きいか小さいか?
あなたが、新聞販売店やサプリメントの定期購入など定期定額制のサービスを提供しているとしましょう。
・毎月10名の新規会員を獲得できる
・既存会員の10%が何らかの理由で退会する
という会員制の小さなビジネスがあるとします。想像できましたか?
では、ここで質問です。
このビジネスを新しくスタートさせて会員が100人になるのはいつか?
「10か月後ではないよなぁ。毎月10%の退会者を加味すると・・・。1年半くらい?」
いかがでしょうか?
毎月10名の新規入会があるが、既存会員の10%が毎月退会するサービスにおいて会員100名になるのはいつか?
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その答えは・・・50か月目です。
なんと、毎月10名の新規会員がいるのにも関わらず、100名の会員を組織するのに4年以上の歳月が必要なのです。グラフにすると以下の通り。
そして、計算するとわかりますが、
このビジネスの会員が101人になることは一生ありません。
なぜなら、会員が100名になった段階で毎月10名が退会する計算となり、新規入会は変わらず10名ですから。会員純増は0になります。
では、どうすればよいのか?
いかがでしょうか?解約率10%のインパクトを理解いただけたでしょうか?
つまり、毎月10名の新規入会があるが、既存会員の10%が退会するビジネスの限界は100名×客単価なのです。月額3,000円なら月商30万円、月額5,000円なら月商50万円となります。
では、どうすればよいのか?!
「新規会員獲得の目途がたったら、次にやることは、会員獲得の効率化ではなく解約客抑制ですよ」私がいつも事業者さんにお願いしていることです。
では、どうやって防止しましょう。
会員特典を手厚くしますか?それとも長期契約を結んだり、解約処理手続きを面倒にしたりして顧客に解約をあきらめさせますか?いずれも短期的には効果が見込めそうですが、私たちのような地元密着のスモールビジネスが行うべき方法とは思えません。
新規客獲得にはいろいろな魔法がありますが、解約防止には魔法などないのです。あるのは手順だけです。
決して難しい手順ではありません。
初めに行うのは、「事実を把握する」「顧客に訊く」の二つです。
顧客と顧客に寄り添う
事実を把握するために、新規客獲得のときと同様に退会者の属性を把握しましょう。つまり退会者のペルソナを設定しましょう
- どこにお住いのどんなライフスタイルの方が、どのような利用状況だったのか?
- WEBサービスなら、どのページをよく利用していたのか?
- いつ、どのような理由で入会したのか?
- 私たちのサービスを解約して節約したお金を何に使うのか?
顧客が特定できれば、次に訊くことは、たった一つ「なぜ解約を決意したのか?」です。
できれば、おひとりおひとりに詳しくお聞きしたいです。
そして、その解約を決意するに至った、サービスに対する不満を解消するプロジェクトをすぐに招集しましょう。
顧客は私たちを知らない
たいへん残念ですが・・顧客は、私たちが、身を削るような思いで顧客のことを考え、特典や無料サービス、料金の引き下げを提供していることを知りません。案外、顧客には伝わっていないものです。
例えば、あなた自身もいつも使っているご自身のクレジットカードのすべての特典を理解していますか?活用していますか?また、今この記事を読んでいるデバイスのすべての機能を把握していますか?
顧客が解約の決断に至る前に、日ごろからあなたが準備している手厚いサービスについて十分に既存顧客にお伝えしましょう。契約を決意した顧客でさえ、特典情報の提供や引き留め施策によって10%の解約率低下ができるそうです。
今日は、解約について一緒に考えてみました。やっぱり顧客の声を集めることは何よりも大切なことですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者
山本 哲也|中小企業診断士
Tetsuya Yamamoto
日本で最も早くフランチャイズチェーンシステムを取り入れ普及させたフランチャイザーに1989年から勤務。清掃スタッフを皮切りに,全国のフランチャイズ店の育成・指導,事業計画の策定,新規事業開発,法人営業などを経験。“リーダーの能力を超える事業成長はない”と考え,人の成長ありきの支援を実施。趣味は,アウトドア全般と飲み歩き。とにかくじっとしていられない。
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執筆者
やま|中小企業診断士
製造業の経営企画部門に勤務。入社以来、管理会計業務に従事し会計スキルをを構築中。まだまだ手探り状態だが、一歩ずつ着実に歩んでいく。
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