前回に引き続き、大阪府茨木市でEnglish学童「Fox X GLOBAL」を運営されている合同会社Foxx & Genus(フォックスアンドジーナス)の代表、オティエノ フランシス(フォックス)さんのお話しをご紹介します。
前回は、Fox X GLOBALの成り立ちや事業概要、STEAM教育を取り入れることの教育効果などから、日本の学校教育では得られ難い体験や学びの機会を提供されていることを伺いました。
第2回目の今回は、創業から事業を軌道に乗せるまでのご苦労やその取り組み、事業運営でとくに留意していることを中心にお話しいただきました。
創業~事業が安定するまで
創業時の状況について教えていただけますか?
フォックスさん:2019年に今の場所に「Fox X GLOBAL」をオープンしました。今はスタッフも増えましたが、最初は3名で始めました。はじめはとにかく生徒を募集するのに苦労しました。
どうやって募集されていたんですか?
フォックスさん:Webマーケティングしたり、チラシを配布したり、といろいろと工夫もしてみたのですが、だれも来てくれないのです。実績のない当教室では信用がなかったのかもしれません。当時はとても厳しかった。
そんな折、近所の大手英語教室が撤退することになりました。そこに通っておられた一人の保護者の方が当教室を知り、体験教室にきてくださいました。保護者の方は体験教室を高く評価してくださり、その教室に通っていた別の保護者の方々に薦めていただいたことで、20名ほどの生徒が当教室に通っていただくことになりました。このご縁がきっかけで、なんとか事業が立ち上がりました。
創業時は認知度も実績も少なく、かなりご苦労されたんですね。
その後、新型コロナが拡大しましたが、影響はなかったのでしょうか。
フォックスさん:最初の緊急事態宣言が発令されて、3ヶ月ほど閉鎖せざるをえなくなりました。ただ、持続化給付金など国の支援もありましたし、zoomなどのWebミーティングツールも活用して、コロナ禍での事業運営に切り替えていくことで、人件費以外のコストを減らす取り組みも行ってきました。
なんとか事業を継続することができ、現在は生徒も80名ほどまで増えました。
最初の20名から60名も増えてますね!
何かきっかけや理由があったりするんでしょうか。
フォックスさん:やはり信用が積み重なっていったことでしょうね。コロナ前から生徒数は徐々に増えてきましたが、生徒や保護者の方の口コミが広がり、体験教室で楽しみながら学ぶ教室の雰囲気を実感していただけているんだと思います。体験教室に来ていただいた方のうち、9割の方が入会されます。
生徒数の増加には、こどもたちの主体性に秘密があった!
それにしても驚異的な生徒数の伸びですね!
何か秘密があるような気がしてならないのですが・・・。
フォックスさん:そうですね、あとは生徒が友達を連れてきてくれることで入会につながることが多いです。例えば定期的にイベントを開催しているのですが、生徒が友達を誘って、一緒に楽しめるようにしています。その際、友達を誘いやすいようパンフレットを作成し、生徒と同じお菓子を渡すチケットや入会の割引券を付けたりしています。「自らやりたい!」と思える空気づくり、場づくりをしていくことで、これが伝わり、結果的に多くの友達を連れてきてくれました。
いやー、子供は我々なんかよりずっと優秀な営業マンですよ(笑)。
教育と同じで、プロモーションにもこどもたちの主体性が有効だったんですね。
ところで、他の英語教室とも競合すると思いますが、どのように差別化されているのでしょうか?
フォックスさん:最近ではつながりのある京都信用金庫がご紹介してくれた、同じ茨木市にある音楽教室とコラボをしています。当教室は音楽教室に英語をかけ合わせたり、楽しく音楽と触れ合うリトミックに英語をかけ合わせたり。お互いに入会している生徒に割引紹介もしたりしています。信頼関係によってお互いの協力体制が強くなる「Social Capital」の発想です。
たしかに英語だけでは差別化は難しいですけど、英語以外の要素と組み合わせることでオンリーワンになれますよね。
フォックスさん:そのとおりです。Fox X GLOBALのXにはかけ合わせることを意味しています。思いをうまく表現してくれますね!よかったらFox X GLOBALの営業マンになりませんか?(笑)
地道な改善活動が育む、生徒の成長と保護者との信頼関係
口コミの評価が高く、体験教室から9割も入会されるのには、主体性を育んだり、差別化する以外にも何か要因があるように思います。
フォックスさん:他には、その日のレッスンをきちんと理解しているかどうか、送迎バスでの移動時間に私が確認するようにしています。答えられなければ、プログラムがよくなかったか、生徒がヤンチャしていたか(笑)。
私は、先生が作るレッスンプログラムに全て目を通しています。何か変更があるときには、先生に説明してもらっています。ときには柔軟な対応をしても全く構いませんが、全てのレッスンプログラムを把握するようにしています。
レッスンの内容がFox X GLOBALが目指すものになっているかを確認するとともに、生徒の習熟度を随所で確認し、プログラムに反映させるためです。
なるほど。レッスンプログラムを確認し、生徒の習熟度を測り、不十分であれば先生とともに見直す。そんな改善サイクルを日常的に回しているんですね。
フォックスさん:そうです。ただ、今のところ全てのレッスンを把握しているのは私しかいません。今と同じことをやりながら規模を拡大していこうと思うと、私のクローンを作るか(笑)、システム化していかなければいけない。ここが課題だと思っています。
規模を拡大していく上での課題はあるものの、こういった改善サイクルを継続的に行うことは、生徒の成長につながり、保護者の方からの期待にも応えることができそうですね。
生徒の成長や期待について、保護者の方と意見交換する場はお持ちなのでしょうか。
フォックスさん:当教室では年に3回、面談の場を設けて、生徒や保護者の方のニーズを面談の場で聞き取り、データベース化しています。英検を取得させたいと考える家庭もあれば、英検は不要だが英会話ができるようになってほしい家庭など、期待はさまざまです。生徒の得手・不得手や成長度合いもそうです。個々人に応じた対応ができるように、こういった場はもっとも重要だと考えています。
頂いたご意見を踏まえプログラムを見直すこともあります。場合によっては、生徒の成長のために、保護者向けの宿題を作ることもありますよ。
保護者の方との接点も多いんですね。
フォックスさん:はい。LINEでグループを作っていて、日常的な困りごと、例えば急用で送迎バスを利用できないとか、別の日に振り替えたいとか、こまめに連絡を取っています。
こういった日常的なことからも、安心感を持ってもらえているんだと思います。
あとがき
経営資源の限られる中小企業にとって、創業時の立ち上げと初期の事業安定化は特に重要なポイントになります。また事業運営や改善の取り組みは、事業継続の要とも言えます。そして何より、顧客との頻繁なコミュニケーションは、関係性を高めるのにとても重要です。フォックスさんのお話しから、これらのヒントが得られるのではないでしょうか。
最終回となる第3回は、フォックスさんが考える今後の事業展望についてご紹介します。これまで海外プロジェクトなど多彩なキャリアを積んでこられたフォックスさん。どのような事業をお考えなのでしょうか。
お楽しみに!
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