貸借対照表と損益計算書ってなんで名前がこんなに違うんですか?
簿記を学び始めたとき、この2つの名前を覚えられなくて苦労する。
片っぽが『対照表』なのに対し、もう一方が『計算書』
なぜ統一してくれないのかと(私が決めたわけでもないのに)生徒に言われる。
この2つは、どちらも会社のお金に関する書類なのだが、両方を『計算書』にしたり、『対照表』に統一はできない。それはこの2つが全然別物だからである。
そこで「貸借対照表と損益計算書はどっちが大切と思いますか?」と聞いてみる。
返事に詰まる生徒に、ヒントのつもりで「貸借対照表は一定時点の財政状態を表し、損益計算書は一定期間の経営成績を表す」と言ってみるが、生徒には念仏を唱えているようにしか聞こえない。
貸借対照表の一定時点というのは『今までの通算』、損益計算書の一定期間というのは『今年の分』とイメージしてほしい。 (本当はそんな単純ではないのですが、イメージですので)
例えば、去年の身長が165cmだったとする。1年間で5cm伸びて、170cmになった。 この165cmとか170cmが『今までの通算』で、5cm伸びたというのは『今年の分』である。
貸借対照表には170cmが載り、損益計算書には5cmが載ることになる。
去年 | 今年 | ||
貸借対照表 | 165 | ➡ | 170 |
損益計算書 | +5 |
今年の伸びは損益計算書で見て、今年を含めた全体は貸借対照表で見ることになる。 と話していると生徒はじれてきて、「で、結局どっちが大切なんスか?」 。 いまさら「どっちも大切」とは言えない雰囲気である。
損益計算書とは、貸借対照表の一部分である「利益」を計算している表に過ぎず、いうなれば, 「世界」の中の「日本」みたいなものである。というと、なんとなく納得する。 いや、別にしないか。
このとき世界が大切か日本が大切かと言われれば、どっちも大切といわざるを得ない。 世界には日本が含まれているし、日本は世界の一部なのだから。
ただし、身長を図った記録(貸借対照表)があれば、1年間の伸び(損益計算書)は計算することができる。去年の165cmと今年の170cmを比べれば、5cm伸びたことは計算できるからである。
では逆もいけるのかというと、損益計算書をすべてかき集めても、170cmにはならない。 損益計算書は毎年の『伸びの記録』なので、生まれた時の身長が不足するのである。
- 会社のこれまでの積み重ねは、貸借対照表で見る
- 会社の今の勢いは、損益計算書で見る
結局はどっちを知りたいのか?で異なるということである。
損益計算書のほかにも、計算書と名の付くものがある。 キャッシュフロー計算書や、株主資本等変動計算書などである。 これらも『計算書』なので、“現金”や“株主資本”といった、貸借対照表の一部分を計算する表に過ぎない。
貸借に意味はない?
簿記特有の言い回しに借方(かりかた)・貸方(かしかた)というものがある。 左側のことを借方、右側のことを貸方と呼ぶ。
『借りたとか、貸したとかの意味はない』と簿記のテキストには堂々と書かれているが、
ではなぜ、借方・貸方と付けたのか?という疑問が残る。意味もなく付けるにしては、借方と貸方は突拍子もない。犬と猿などの方がまだ思いつく。
もちろん意味はある。
簿記が発達したのは大航海時代といわれており、すごくざっくりいうと、船で未開拓の土地に行き、香辛料や銀など自分の国にはないモノを持ち帰り、売って儲ける時代である。
自分の国にないものだから、高い値段を付けて売ることができる。ぼろ儲けをした人もあるだろう。 ただし、儲かるというのはあくまでも『船が帰ってくれば』の話である。
当時は航海の技術も未熟で、難破する船などもたくさんあった時代。 しかも船を出すのに莫大な金がかかるのである。
いうなれば「10億円当たる宝くじを5億円分買う」ようなもの。 外れれば一生ものの借金が残る、かなりのギャンブルである。
そこで商人は自分1人で金を出すことはせず、みんなで買おうと言い出した。 『うまくいったら倍にして返すよ♪』と。 5万円を1万人から集めると5億円になる。これが株式である。
右側(貸方)には、お金を貸してくれた人の名前と金額を書く。( 船がうまく帰ってきたときは出資割合に応じで山分けするのである。 )
借方 | 貸方 |
ヒロさん 500万円 | |
トシさん 600万円 | |
マサさん 700万円 |
左側(借方)には、借りたお金を何に使ったかと金額を書く。(ネコババや無駄使いを監視するためである。)
借方 | 貸方 |
船 1,000万円 | |
食料 500万円 | |
燃料 300万円 |
ここから、借方はお金の使い道を、貸方はお金の入手方法を表す。につながるのである。
借方 | 貸方 | ||
お金の使い道 | お金の入手方法 |
ここを理解しないと勘定科目はただ覚えるだけのものになり、簿記学習がツラくなる。
貸借が反対の理由
疑問ついでに、左側が借方・右側が貸方なのに、貸借対照表って逆じゃない? と思った人はいるだろうか。(私は思った)
左が『借』で右が『貸』なのだから、 言うなら借貸対照表だろうと。
借方 | 貸方 |
簿記は福沢諭吉が日本へ紹介したといわれている(お弟子さんが翻訳したらしい)。 当時は『右から左に文字を読んでいた時代』であるので、 貸借対照表になるということである。
お読みいただきありがとうございました。
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執筆者
じょりさん|中小企業診断士
簿記講師。趣味はお風呂巡りと折り紙。サウナ従業員・レンタルビデオ店員・ラーメン屋などなどを経て簿記講師となる。この春からパソコン講師にもなる予定。モットーは為せば成る。でも人間できないこともある。
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