202X年、世界は独善主義の炎に包まれた。
某有名アニメの冒頭ナレーションではありませんが、最近は新型コロナに関連起因する諸々の事象、某国や某スポーツでの人種差別問題等暗い話題ばかりで気が滅入りそうになります。世界的にもそうですが、日常生活においても……
1.暗闇の中の一筋の光
神戸市内の某企業に勤めるTさん(仮)は、今日も元気、意気揚々と出社します。朝6時過ぎ、自宅最寄りのN駅からいつものように阪〇電車に乗車します。
「おっ、今日は2人掛けクロスシートが空いてるぞ、ラッキー★」
気分良く電車に乗り込もうとしたTさんですが、隣のドア乗車位置にいたはずの他の利用者が猛ダッシュでTさんが乗ろうとしたドアに走りこんできて、席をドッカと占領してしまいました。Tさんは落ち込んでしまいました。
さてさて、Tさんは会社の最寄り駅に着きました、おやおやあまり元気がありません。まだ先ほどのできごとを引きずっているのでしょうか?
(この通勤で使う道路、いつもコンビニの食品ゴミやたばこの吸い殻がたくさん落ちてる……このパンの袋、昨日は落ちてなかったのに……)
どうやら道路の汚さに辟易しているようです。
「けほっ!けほっ!!」
今度は、向かいから歩いてきた人が吐いたたばこの煙にむせてしまいました。Tさんはすっかり気分が滅入ってしまいました。
夜8時、自宅に戻ったTさんはいつものように郵便受けを確認します。すると、少し厚みのある茶色の封筒が入っていました。どうやら某CtoCサイトで購入した書籍が届いたようです。
(今日は散々な目に遭った。ひどい気分だ、今日はとても本を読む気になれないや。とは言え、開封現品確認して出品者さんを評価しないと……。)
Tさんが封筒を開けます。購入した書籍は防水用のビニール袋に丁寧に包まれており、オシャレなマスキングテープで封をされています。出品者さんの丁寧さに感銘を受けたTさん、丁寧に包装を解いていきます。すると、中から現れた書籍の表面には、大判の付箋が付いているではありませんか。何か文字が書いてある。Tさんが付箋に目をやると……突如付箋が輝きだしました。
2.ペイフォワード
付箋には丁寧な文字で、購入したTさんへ出品者さんからのお礼が書いてありました。手書きの文字で感謝の意を伝えられたのは、Tさんにとって数年ぶりのことでありました。すっかり感動したTさんは、それまでの落ち込みはどこへ行ったのか、秘蔵のアイラモルトウイスキー(近所のドン・キホーテで買った700ml:4,200円(税抜))を飲んで気分良く眠りにつきました。
Tさんはなぜ付箋にそこまで感動したのでしょうか。詳細を聞いてみると、出品者は主に女性向けの服飾品を出品しており、たまたま出品したビジネス書をTさんが購入、リピート購買が見込めるはずもないTさんに対しても付箋という形で感謝の気持ちを伝えてくださったことに、 今回限りになるであろう取引相手にでもここまで気遣えるのかと、 甚く感動したようです。
出品者さんに直接還元することができないTさんは、どうしたらいいか考えました。すると、かつて視聴したことのある映画のタイトルにもなっていた、ある言葉を思い出しました。それは……
ペイフォワード
ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくことを意味する英語。または、多数の人物が親切の輪を広げていくための運動のこと。アメリカ合衆国などで突発的に一つの場所で行われることが稀にある。ちなみに同一人物にお返しすることはペイバック(pay it back,pay back)というが、これでは2人の間で親切が途切れてしまう上、悪い意味でのお返し(復讐)の意図も含んでしまうことがある。
出典:実用日本語表現辞典
「そうだ、ペイフォワードすればいいんだ!そうすれば巡り巡っていつか出品者さんにも届くはずだ!」
Tさんは早速翌日からペイフォワードを実践することにしました。会社の廊下に落ちていたゴミを拾う、エレベーターでひたすら開閉ボタンを押す役目を担う、皆が面倒くさがる資料作りを引き受ける、電車で高齢者に席を譲る……いつか出品者さんに届くことを信じて。
3.まごころを、君に
ビジネスの世界でペイフォワードの概念を考えると、
「情けは人の為ならず」
人に親切にすれば、その相手のためになるだけでなく、やがてはよい報いとなって自分にもどってくる、ということ。
出典:コトバンク
という言葉に集約されるかもしれません。典型的な事例としては、接客を伴う業種業態において、ちょっとした気配りが顧客の店に対する印象を良くし、クチコミの拡散やリピーター化に繋がる、といったことが挙げられます。この気配りは仕事上仕方なく行った場合ではなく、その接客を行ったスタッフ(コンタクトパーソネル)の真心から行われた場合のみ、効果を発揮します。顧客はそこまで鈍感ではありません、相手が心からこちらを気遣ってくれたと感じ入った時、大いに感動するのです。かつて私も仕事柄多くのホテルに泊まってきましたが、一番印象に残っているのは東京の某中小ホテルチェーンのホテル。そこは水回り含む客室設備・朝食は大したことありませんでしたが、チェックイン時の笑顔と顧客の思考の先を読んだ対応と宿泊に感謝する宛名入りの手書きメッセージに大変感動しました。(偶然にもTさんと同じですね)
良い製品サービスであれば、あるいは顧客ニーズに合致していれば、接客対応が優れていなくても売れる、と主張される方の考えは大いに理解できます。しかし人間は感情に左右されやすい社会的な生き物です。私は、消費意欲が減退しつつある、また人と人の関わり方がリアルからオンラインへと移行しつつある昨今、どうしても「思いやり」「まごころ」といった物理的というよりは精神的な言葉が、今後オン・オフともにキーワードになりそうな気がしてならないのです。
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執筆者
田中 誠人|中小企業診断士
Tanaka Masato
大手流通小売業における経営企画業務、大手ビジネスチェーンの事業企画・新規開発、大手製造業における事業企画と幅広い業種の経営に関する経験を持つコンサルタント。 特に管理会計、ファイナンスに強みを持つ一方で、現地現物主義をモットーにしている。歴史と旅行が趣味なシティボーイ?
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