【取材記事】十徳日本酒販売所 小島拓也さん その2

今回は、大阪府吹田市で酒販店「十徳日本酒販売所」を経営されている小島拓也さんにお話を伺いました。
十徳日本酒販売所は、2020年4月7日、第1回目の緊急事態宣言が発令された日にオープンしました。昔ながらの酒屋のイメージとは異なる、とても洒落た外観の日本酒専門酒販店です。今回は、そのビジネスモデルから、日本酒への熱い想いまで、いろいろなお話を伺いました。

目次

コンセプトが生まれたきっかけ

お店のコンセプト“酔うから愉しむに”というのは、どのようにしてできたのでしょうか?


小島店主:大学生の時に、お酒と出会ったんですが、当時は、お酒は酔っ払うための、酔ってワイワイするための道具だったんです。大学が伏見にあったので、下宿の友人宅で伏見のお酒で飲み会をしようとなり、「古都千年」というお酒を始めて飲みました。私が最初に飲んだ日本酒でした。それがあまりに美味しくて、それ以来すっかり日本酒にはまってしまいました。それから「お酒は酔うだけのものではなく、美味しいものを愉しむ」という風に変わりました。いろいろ飲みましたが、やっぱり日本酒が一番美味しいですね。実は、口に入れるものの中で日本酒が一番うまいって思っているんですよ(笑)

学生時代の日本酒との出会いがその後の人生を変えてしまうのですね。


小島店主:そうですね。二十歳の時にはすでに将来独立することを決めてしまったので、まずは社会人の経験を積んだ後、大阪では有名な日本酒専門店で六年半働いて、それから、酒造りもやりたくて、秋鹿酒蔵という蔵元で働きました。秋鹿で働こうと決めたのは、生酛・山廃酛・速醸酛(きもと・やまはい・そくじょうもと)という3種類全てのお酒の作り方を見ることができる珍しい蔵元だったことが理由です。お米を作れた経験も良かったです。普通の蔵ですと、仕事が冬場にしかないのですが、夏は米作りという仕事が秋鹿にはあるので、本当に勉強になりました。ぜひ、秋鹿のことは、記事に載せておいてくださいね(笑)
酒蔵で働いてみて、「自分がやりたいことは、酒を売ることだな」と思えたことも大きな出来事でした。実際に店を開いてみて、自分が好きな物を売るってこんなに楽しいんだってことを改めて思いました。日頃、日本酒を飲まない方が、僕が勧める日本酒でその美味しさを知って飲むようになったりという体験が酒屋を始める前から、結構あったので、これをそのまま仕事にした感じです。

まさに日本酒コンサルタント!セミナーなども開催されているようですね。


小島店主:あれはコロナの間、飲食店さんが暇なので、その間に飲食店さんの勉強会みたいな感じでやりました。ホールがアルバイトのお店だと、日本酒のことを学ぶ機会がないので基礎中の基礎を教えている感じです。飲食店さんが簡単にお酒を売れるようにする、それが僕のプロとしての仕事だと思っています。実は、昔からずっと日本酒は小売りじゃなくて、コンサルティングだって言っています。どこで買っても大きく値段が変わらない日本酒で他と差別化するとなると、独自の情報を付け加えるしかないですよね。
そのために、新たな蔵元と取引を始める時には必ず先方へ伺いますね。蔵元がどういう思いを持ってこの酒を売って欲しいのかっていうのを聞くようにしています。そこに自分の言葉を乗せて飲み手に伝えています。
例えば、お米の銘柄や精米具合、使っている酵母、作り方などから、味の分解をするように意識しています。美山錦っていうお米を使っていたら、今まで飲んできた美山錦のお酒を改めて思い返して比較してみます。日本酒には味を決定する要素がいっぱいあります。それを分析することで、だいたいの傾向はそこでつかめます。とは言っても、味の感じ方は十人十色で、絶対にこうだという正解はありません。なので、お客様のご要望をヒアリングした上でご提案をし、さらに酒造りの背景やその他の関連する情報をお伝えすることで、味にもプラスアルファが付くと思っています。コンサルティングというのも偉そうですけど、そう思って付加価値を高めるようにしています。

今後の取り組み

若いうちから酒屋をやるということに対して、蔵元で働いたり酒屋で働いたりと、計画的にいろいろなことに取り組んでこられました。将来の夢に対してまだ不足していることがあるとしたらどのようなことでしょうか?


小島店主:こういう酒屋を作ることも夢でしたが、この店のゴールは、「普段の生活の中で美味しい日本酒をご近所さんに飲んでもらう」ということです。だから、将来的には、講演会のような、情報発信はしないといけないのかなとも考えています。あとはイベントですね。付き合いのある市内の飲食店3店舗が始めた日本酒イベントは、いつの間にか5,000人も集めるような規模のイベントになっています。そういうイベントができるようになると、もっと日本酒のすそ野を広げられるのだと思っています。それをこの北摂の地域でやりたいです。あとは、異業種とのコラボですね。春にこの店でフルーツ大福をアテにしたイベントをしたんですよ。フルーツ大福と日本酒。面白いでしょ?客層が違うもの同士がコラボすることで、我々にもお客さんにもいろいろな気づき生まれると思うのです。酒好きは、「世の中にこんなに美味しいフルーツ大福があるんや」となって、逆にフルーツ大福好きの人は、「日本酒ってこんなに美味しいんや」そんな相互作用。そんなのが面白いんじゃないかなと思っていてこれからもやりたいなと考えています。そうやって、少しでも日本酒の良さを知ってもらって、すそ野を広げていきたいです。

ちょうど18時

今日のお一人目のお客様は上品な大人の女性。お話を伺うとご近所とのこと。といっても徒歩で20分ぐらいかけてこられているそうで、汗だくになって来店されていました。店主との会話を楽しみながらお酒を選ぶ姿を見て、「先ほど伺ったお話そのものだな」。地元から愛されるお店というのはこういうことなのだと感じました。

よくお見えになるのですか?

女性:そうですね1週間に1回くらいでしょうか。20分かけて歩いてきます。近くにスーパーしかなくて、こんな店がないので。歩いて来るしかないんですよね。本当にこの店ができて良かったと思っています。友達にも自慢しています。
小島店主:オープン前には、会社帰りのお父さんが家に帰る前に来店してくれるというイメージを持っていたのですが、実際にやってみると、意外にも主婦の方が食事の用意をする前に買いに来ていただいています。平日は配達優先なので、日曜・祝日に朝から店を開けて、来店客を迎えています。土曜日もがんばって店を早めに開けたりもして対応しています。

本日二人目のお客さま。穏やかな感じの男性

今から飲み始めですか?

男性:家族で買い物に出てきて、だいたい終わったので、私だけちょっと別行動(笑)ということでちょろちょろと抜けてきたわけです。
ちょっと飲んだら、おうちで合流して夕食ですね。運転もできませんから。(笑)奥さんもわかってくださってて、その辺りは(笑)
家におしゃれなチラシが入っていたことがきっかけでお邪魔するようになり、毎週のようにうかがっています。

我々も試飲タイム

お勧めのお酒がありましたら試飲させていただきたいです。

小島店主:それでは、大阪の代表的なお酒としての秋鹿を飲んでみてください。定番ではなく山廃を飲んでいただきます。面白いお酒です。
酒造りには、山おろしっていうコメをすりおろす肉体的に大変な工程があるのですが、いろんな研究の結果、山おろしをしなくても美味しいお酒が作れるようになり「山おろしを廃止しよう」ということで山おろし廃止。そして“山廃”となりました。
しかし、決して、手抜きではなく、どういうお酒を目指すかによって、製法は変わるものなのです。生酛には生酛にしか出せない味があって、山廃には山廃にしか出せない味があり、それぞれに美味しいです。
本日は、いろいろなお話と美味しいお酒をありがとうございました。

十徳日本酒販売所

〒565-0851

大阪府吹田市千里山西4丁目39番

定休日:火曜日

営業時間:18時~21時

(日曜日のみ10時開店)

電話:06-6310-2211

HP: https://www.juttoku-sake.com/

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